上記は電波法のFM放送で定められている電波の規格の抜粋です。
それでは、順を追って説明しましょう
なお、理解しやすい様にミニFMの送信機の性能と対比させての説明を入れて見ました。
周波数許容偏差 :20×10~6
送信する電波の周波数精度ですが、出力の如何に関わらず、この精度を要求しています。
80MHzの電波を出したとして+80.001599〜79.998401が許される限度です。
大手放送局が使ってる送信機では一桁から二桁は良いのが現状ですが、
なお、地方のサテライト局やコミニィテーFMは多少精度が劣ります。
精度が劣ると言っても規格を割り込む事は在りません誤解の無い様に、!
私の実測では、大手放送局は、100Hz以内、ずれても±50Hz前後
サテライト局やコミニィテーFMは、500Hz以内、最大にずれて±450Hzを確認
ミニFM用の送信機は価格もそれなりのオモチャなので
いくらPLLで周波数を制御していると言っても比較にはなりません。
受信側で問題の起きない程度の周波数精度でしかありません。
中には粗悪な物も有って25000Hzもずれている物を見たことがあります。
10000Hz以上ずれるとデジタルチューナーでは周波数のズレにより受信に問題が生じます。
スプリアス強度 :1mW以下で60dB以下とあります。
これに関しては、dBの解釈によって変わって来るような気がしますが、
私は、-60dBmと理解しています、その根拠は、1mW以下で60dB以下と言う事にあります。
この規格だと出力の如何に関わらず、1mW以上のスプリアス強度は認められていません、
したがって1KWの出力を出した時のスプリアスは、-60dBmの時に、1mWになりまが、
10KWの出力を出した時のスプリアスが、-60dBmでは10mWになってしまうのです。
電波法では1KWの出力を超えた時点でスプリアスは1mW以下と言う事になり、
10KWの出力を出すためにはスプリアス-70dBmを確保し1mW以下と言う厳しい規格を
クリアーしなければなりません。
1KW以下の出力に関しては出力の如何に関わらず、-60dBm以上と、なります。
ゴミ電波の量は1/1.000.000.以下でなくてはなりません。
なお、この規格は送信機単体での規格では無くアンテナ等を含めた総合規格となっています。
使用するアンテナ等も規格をクリアーする上では重要な役割を持っています。
Harmonic(高調波)とSpurious(スプリアス)
高調波とは、発射される電波の2倍、3倍、4倍と言うように高次に
発射されるゴミ電波の事である。
スプリアスとは、送信電波以外の周波数で発射されるゴミ電波の事である。
高調波以外の周波数で観測されるゴミ電波をスプリアスと呼んでいる様です。
ミニFM用の送信機は元々の出力が弱い事もあって、高調波やスプリアスに関しては、
極めてラフなのが現状です、測定器で見ると驚くほど多量のゴミ電波が観測されます。
物理的に、どの位凄いかって言うと出力が1000倍も有るプロ送信機より
出力が1/1000なのにミニFM用の送信機の方がゴミ電波の量が多いってのが現実なんです。
ほんとに微弱電波だから許される的な物なので、
この電波を増幅したりすると、単なる妨害電波発生器になります。
パイロット信号周波数確度 :19000Hz ±2Hz以内
これは説明不要パイロット信号精度は±2Hz以内って事で理解出来ますね。
パイロット信号位相許容偏差 :±5度以内
これを理解するのは、かなり難しいと思いますが、送信設備の検査測定法の中に記載されている、
ステレオ用副搬送波の周波数及びパイロット信号の位相と言う項目の中に有ります。
38KHzの副搬送波とパイロット信号の位相のズレの事です、このズレが±5度以内と規制されているのです。
この位相のズレが起こるとステレオのセパレーションが極度に劣化します。
ミニFM送信機では、凄い物を沢山見ました、40度以上もズレた機器なんか当たり前の世界で、
ミニFM送信機で、この規格をクリアーしている機器に残念ながらお目にかかっていません。
って言うより位相を合わせる為の回路が存在していないので、
物理的に規格にに沿った信号を実現する事は現実的に不可能な状態です。
パイロット信号周波数偏移 :±75KHzの8〜10%の範囲内
これも、残念ながらミニFM用の送信機で、私はこの規格内の機器にお目にかかっていません。
ミニFM送信機の場合パイロット信号がクリーンでは無い為にパイロット信号の認識が甘くなるので
±75KHzの偏移に対し15〜30%程度のオーバーレベルに設定しているようです、これは極めて悪い状況を生み出します、
濁ったパイロット信号のレベルが高いのでオーディオ信号との干渉ビートが発生し音が濁ると言う悪循環に
加え干渉ビートにおける帯域拡散と言うオマケが付くので、受信側のチューナーでも歪が発生し極度に音が歪んでしまうのです。
ステレオ放送を認識させるためにパイロット信号のレベルを高くしているものと思われますが、
信号純度が低い場合悪循環を招くので限界まで下げた方が有効な方法である事は言うまでもありません。
内副搬送波残留分による主搬送波周波数偏移 :±75KHzの1%以下
38KHzの副搬送波のキャリアサプレッションです。
38KHzの副搬送波の漏れによって起こる周波数偏移が主搬送波の周波数偏移±75KHzに対して1%以下
パイロット信号をOFFにした時に測定される周波数偏移が0.75KHz以下って事で、
38KHzのサブキャリアの抑圧が-40dBになります。
総合周波数特性(プリエンファシスを含む):プリエンファシス特性表を参照
これはミキサー等の送出系を含んだ周波数特性です。
すなわち音の入り口のミキサーから電波に乗った音の周波数特性と言う事になります。
プリエンファシスの理想特性から許容範囲が定められています。
左および右信号のレベル差 :1.5dB以内 (100Hz〜10KHz)
左右のレベル差って事で理解できると思いますが、
これも、上記の様に音の入り口のミキサーから電波に乗った音の周波数特性と言う事になり、
総合周波数特性の規格同様、繋がってる機器の僅かな誤差が重なると規格を割り込んでしまいます。
規格維持の為には音声レベルのキャリブレーションは重要な要素となって来るのです。
総合歪率 :±75KHzの周波数偏移に対して (100%変調)
50Hz〜10.000Hz 2%
10.000Hz〜15.000Hz 3%
現在のオーディオ機器からすると、信じられない位、悪い数値ですが、
ミキサーから電波に乗った音の総合歪率と言う事なので、
実際には、結構厳しい規格で有ると思います。
ミニFM局の場合、いくら高級オーディオ機器から音を出しても最後に繋がっている
送信機がヤバイのでこの規格をクリアーするのは難しい。
信号対雑音比 :55dB以下 1KHzで±75KHzの周波数偏移に対して
これも上記の様に全ての機器を繋いだ上での、S/N比
残留振幅変調雑音 :-50dB以下
音系の規格に含まれているのが不思議ですが、
FM電波に含まれるAM信号の割合を定めたもので、
FM送信機から発生するAM信号を-50dB以下と規制していますが、
無音での規格では意味を持たない。
本来なら±75KHzの周波数偏移に対しての振幅変調雑音で無ければ意味が無いと思われますが・?
VCOから発生する雑音によって電波が縦にブレてAM信号を含んだ機器や、
ミニFM用の送信機の場合、音を入れるとAM信号がドバーって出る機器があります。
FM送信機なのにAM信号が観測されるのも変ですが?
左右分離度 :30dB以上
(100Hz〜10KHzの間±75KHzの周波数偏移に対して
30dBなんてたいした規格では無い様に思われますが、各周波数レンジに於いての規格なので
かなり厳しくなります、特に10KHz付近の周波数では難しくなります。
ミニFM用の送信機の場合、低域でもPLLの阻害を受けるので上下の周波数レンジに於いて
ほとんどの機器はこの規格をクリアー出来ていません。
40dBだ、50dBのセパレーションとかの性能はミニFM用の送信機では物理的に有り得ません。
怪しげなミニFM界の噂や情報に惑わされてはいけません。
何故その様な事が言われて要るのか理解できませんが、
実際には、一般的な人の耳は15dB程度のレベル差が有れば十分にステレオ感が得られるのです、
位相のズレなどによる定位のボケなどによる錯覚で有ろうと思われます。
測定器を持たない人達がする送信機の評価は物理的な性能評価では無いのであてになりません。
FM放送における電波の質 /「理想的なFM送信機とは」
FM放送における電波の質 /「法が定めるFM放送における電波の質」
まともな電波の基本的な部分/「Pre-emphasis.」
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